Aiha Higurashi / perfect days
日暮愛葉 / パーフェクトデイズ
PCD-18601 | felicity cap-95 定価¥2,500 (税抜価格¥2,381)

アコースティックにラヴ&ダイレクト〜愛葉ソロ、パーフェクトなハーヴェスト。

DRITT DRITTEL / Lektion No.1

[収録曲]
01. what to say
02. take me home
03. sorry I am crazy
04. out of my bed
05. the sun and moon
06. becoz of U
07. if we belong
08. baby baby baby
09. perfect days (I'm crazy for U)
10. some sunny day
11. I know


 もしかすると、僕たちはこのアルバムで初めて日暮愛葉の素顔を目撃することになるのかもしれない。歌とギター、そして、楽曲のグルーヴを可視化したリズムのアクセントや空気をうっすらと色づけるキーボードからなる極めてシンプルな彼女のサード・ソロ・アルバムを聴きながら、そんなことを思う。パンクやノー・ウェイヴ、オルタナティヴ・ロックのライフ・スタイルを含めた在り方にインスパイアされ、作品を発表し続けてきた彼女が辿り着いたのは、自室で愛しむように長らく聴き続けてきたという英国のアイドル・バンド、モンキーズやサイケデリック・フォーク・シンガーのドノヴァン、ウェストコーストの風が吹くリンダ・ロンシュタットや夭折したエリオット・スミスに連なってゆくシンガー・ソング・ライターの世界。彼女が内面で人知れず育んでいた、そうしたサウンドスケープを無防備なまま具現化していることに驚かされる。
 しかし、その一方で本作はかつてアンプで増幅していた曲をオーガニックなアコースティック・アレンジで歌ってみたという安易な作品ではない。一音一音の響きや音と音の間に耳を澄ませば、そこには曲が生まれた音楽的背景や錯綜する感情、テンションの張りなど、様々なことが無言のうちに物語られているからだ。かつてのSEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERやその後の試行錯誤が彼女にトラウマを与えた一時期のソロ活動を経て、バンドでの表現はLOVES.、トラック上のコラボレーションはSHAKKAZOMBIEのTSUTCHIEと活動再開させたRAVOLTAという、現在の明確な活動スタンスに落ち着いたからこそ本作が成立しているのだろう。
 そして、実り豊かな経験や音楽の多様性を貫いて響くシンプルな本作は、彼女の実際の体験をもとに、一つの恋が始まり、高揚感や不安感など、様々な感情が膨らんでいく様を全11曲に渡って主観的な視点から描いている。かつてのSEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERや現在のLOVES.がリリースしてきた作品をして、多くのリスナーが恐らくはストレートな印象を抱いているであろう彼女のリリックだが、実は映画的なストーリーに落とし込んだ楽曲が多く、彼女が自らの心境を独白している本作の作風は他作とは違う大きな特徴と言える。
 おおよそ、音楽家という生き物は"真実に触れるような、ありのままの表現をそっくりそのまま受け入れて欲しい"という究極的な願望を持っているものだ。しかし、表現者自身にさえ牙を剥く、ありのままの表現はありのままの表現でありさえすれば、受け入れてもらえるわけではないし、過度な自意識やそうした表現を世に晒す恐怖感との戦いでもあって、音楽それ自体が恋愛のようなもの。しかし、そうそうやって来ないパーフェクトなマッチングの奇跡的なタイミングを、このアルバムにあっては作曲からレコーディングの終了までわずかな期間のスムーズな作業によって捉えたという。ロックの世界にあっては作品完成までの険しい道のりが作品の価値を高めることはよくある話だが、さらりと生まれた作品が普遍的な何かを言い当てることもある。このアルバムの場合はもちろん後者であって、しなやかで軽やかな音と言葉がいつまでも残り続ける、そんな素晴らしい作品だ。出会い頭の恋愛、ある日訪れた完璧な日々、そして、奇跡的なタイミングで産み落とされた傑作アルバム。日暮愛葉本人も本作のレコーディングで過去の作品とは異なる手応えを感じているという。既に数回行ったライヴではPCとパーカッションを交え、弾き語りとも言い難い不思議な形態のパフォーマンスを行っているが、そんな風にして彼女が落とす感情のしずくは聴く者の心に静かな、そして確かな波紋を広げてゆくことになりそうだ。 (小野田 雄)


プロフィール

2002年 SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER活動休止後、ソロ活動スタート。 2003年 Ki/oon Recordsからシングル「NEW LIFE」にてソロデビュー。アルバム「Born Beautiful」始め3枚のアルバムをコンスタントにリリースしていく。 2005年 ニュープロジェクトとして、秋山隆彦(drs: downy/Fresh!/KAREN)、岩谷啓士郎(gtr, mpl.: KIB/トクマルシューゴ/フラバルス/folfer)と自身のバンドLOVES.を結成。都内を中心に精力的にライヴ活動をスタート。 2007年 LOVES.名義での1st ALBUM「LUCKY ME」をリリース。10月には松尾スズキ監督脚本の映画「クワイエットルームにようこそ」の主題歌『NAKED ME』を含むsplit single「NAKED ME」をリリース。 2008年 マンスリーライブを6ヶ月にわたり開催。9月に自身で立ち上げた新レーベル・chance!dance!recordから2ndアルバム「NOW IS THE TIME!」をリリース。 現在 ソロとして執筆、楽曲提供を手がけながら自身のバンドLOVES.のニューアルバムに向けREC準備、先日、10年振りに伝説のユニット!愛葉×TSUTCHIE(SHAKKAZOMBIE)とのRAVOLTAも活動を再開し、ライヴ、そしてコンピレーション「PUBLIC/IMAGE.SOUNDS」へも新録にて参加。